2016年9月4日日曜日

日記)セーレンによるビジネスモデル改革 ICTを生かせばいろいろなことが可能となる

セーレンは1889年(明治23年)創業の老舗企業である。事業内容としては、繊維製品の企画・製造・販売で、素材作りはもちろんのこと、デザインの企画、染色、捺染、仕上げ加工を行う会社である。セーレンの現在の売上規模は1072億円(2016年3月度)、経常利益 88億円の優良企業である。

セーレンは、1889年の創業以来、繊維の技術を積み重ねることにより、成長してきたが、1980年代の繊維不況のあおりにより、存亡の危機に立つ。その後、現在の会長である川田達男氏のリーダーシップのもと、従来の委託体質から脱却し、「IT化」、「流通のダイレクト化」、「グローバル化」、「非衣料・非繊維」を進めることで飛躍をしてきた。


セーレンは元々の中核事業であるハイファッション、アパレル事業を中核としてきたが、昨今は非衣料、非繊維の事業を伸ばし、なかでも自動車の内装事業、カーシート事業であり、現在は売上の57%を占めている。また、セーレンは元々の同社のコア事業である繊維事業を新たなる成長ステージに乗せるため、ITを生かしたビジネスモデルの刷新を行ってきた。

その一貫として取り組んだのがVISCOTEC‘S事業である。1980年代、繊維不況のさなか、従来の委託型ではなく、ITを使ったビジネスモデル改革により、エンドユーザーとダイレクトに繋がるモデルを考案した。それがVISCOTEC’S事業である。

 VISCOTEC‘S事業の開発に至った経緯は、開発開始に至った1980年は、消費者は、新しいもの、自分だけのものを、タイムリーに供給する、つまり早く供給してくれることを望んでいるということがわかった。

 反面、アパレルメーカーは流行のサイクルが早くなることに伴い、在庫で苦しみ、その結果、消費者は高いものを買わなければならないことがわかった。

 こうした状況をセーレンは分析し、今後、IT革命がおきることで、時間、距離差がなくなり、ITを駆使することにより、差別化された小ロットの製品を短納期でグローバルに供給することができると考えた。それがVISCOTEC’S事業開発の経緯である。VISCOTEC‘Sという名称は、VISUAL TECHNOLOGY SYSTEMの略であり、顧客とビジュアルに対話をしながら、“欲しいとき”に“欲しいものを”、“欲しいだけ”供給することを事業コンセプトとしている。

 そして、1980年に開発着手後、1986年にインクジェットプリンタのプロトタイプ完成、1988年にはインクジェットの量産タイプを完成している。

これにより、従来のアナログのプロセスからデジタルインクジェット化されたことにより、従来のスクリーン工程で必要であった色分解、フィルムトレース、色毎の型枠の作成、各色の型あわせ刷りという複雑な工程からCADでデザインワークを行い、直接生地に印写することにより、工程を簡単にし、時間を大幅に短縮することが可能となった。

それにより、元来であれば、デザインをつくってから、一着目を見るまで1ヶ月かかっていたが、CAD、インクジェットとデジタルプロセス化することによって、数時間で1着目を仕上げることが可能となった。さらに、スクリーン工程では35色の表現が精一杯であったが、VISCOTEC‘Sでは、1677万色という非常に多くの色が使えるようになった。


このようにセーレンは過去、アナログのスクリーン印刷工程による生産プロセスを、CADシステムからデジタルインクジェット印刷に生産工程を変革することにより、流通のダイレクト化、在庫レス、顧客へのパーソナル対応を可能にした「セーレン型SPAビジネス」を推進している。

こうした事例が大きく花開いたのは、水着ビジネスである。 

水着は、5月の連休明けから店頭に並びはじめる。そのため、4月後半から試験的出店をし、6月の終わりから7月、8月のお盆までが実際の販売期間であり、2から、2.5ヶ月のみの短い販売期間になる。そのため、実際の納期が1から2ヶ月になるため、かなり前から準備をしておくが、冷夏になると半分以上は売れず、処分しなければならない。

しかしながら、VISCOTEC‘Sであれば、クイックレスポンスでの対応が可能となり、2週間での納入が可能となった。そのため、在庫処分が少なくし、市場のニーズに応じた商品供給ができる。

さらに、2015年9月、VISCOTECSによる世界初のパーソナルオーダー事業の本格展開を発表し、セーレン「Viscotecs make your brand」を発表した。


これにより、洋服のパーソナルオーダーが可能となり、シルエットや色、柄を自由自在に組み合わせて、47万通りのなかから“自分のブランド”を作ることができるまったく新しいパーソナルオーダーシステムを完成させた。

これにより、個性を大事にするお洒落な女性層をターゲットにし、2018年に20から30億円の売上規模を目指し、事業展開をしている。こうしたセーレンの取り組みは、ICTを活用した生産革新により、顧客とダイレクトに繋がることで、顧客の好みにあった洋服を短い納期で作ることを実現した。

0 件のコメント: