2022年2月25日金曜日

読書)好き嫌いと経営 楠健一

 好き嫌いと経営、なかなか思いつかない本のタイトル、それが目を引いた。経営者も人間なので好き嫌いがある。経営者は公の立場なので、好き嫌いを仕事に持ち出してはいけないと考えることが多いが経営者だって人間である。好き嫌いはある。何が好き、何が嫌いって、思いっきり経営者が正直に語っている。それが非常に新鮮な響きのする本であった。例えば、ライフネット生命の出口氏、ライフネット生命を創業した彼は読書と歴史が大好き。仕事は面白く早く行う。自分で行うことが好き。日本生命時代は自分自身で考え、仕事の目的を考え、どうしたらもっと効率がよくなるか、面白くなるか、そしてかえって本が読めるかを考えた。退屈な仕事は早く終わらせる。読書が大好き、でも速読は嫌い。ひとの話をお聞きするのと読書は同じ。だから速読ではなく、じっくり聞くこと。嫌いなのは話が嫌いなひと。出口氏は、やはりせっかちだという。経営者は、ほぼ、100%せっかちだ。また、品格がある人、は素直な人という。品格という言葉を用いるひとのことを嫌いという。

永守氏の話も最高に面白かった。彼の好きなことは、ハンズオンでなんでも自分自身でやること。会社を自分で設立し、仕事をすることが大好き。24時間365日仕事をしている。めちゃくちゃせっかち。嫌いなことははっきり言う。IRでも日本電産の経営に対してポリシーを明確に述べる。それに対して、異をとなえるアナリスト、投資家はそれであれば株を売ればいいではないかという。そこまで腹が座っていることが気持ちがいい。

そして柳井氏の話も面白かった。ファーストリテイリングを世界企業にした柳井氏、接待はしない、仕事は早く終わらせ、早く帰る。朝早くから集中していると夕方近くには早く家に帰りたくなるという。それくらい仕事に集中している。効率よく、仕事を進めていく

原田えいこう氏の話も面白かった。マクドナルドの社長でクオーターパウンズなどをひっとさせた彼は消費者調査が嫌いだ。消費者調査では消費者の潜在的なニーズはわからない。消費者に何が欲しいと聞いて、その通りに出したものは売れない。消費者は自分のニーズに気づいていないのである。消費者調査で必ず答えにあがる、有機野菜や健康などその通りにやっても決して売れない。ある意味、潜在的なニーズに響く商品が必要なのだ。

新浪氏の話も傑作である。ON OFFの切替はない。新浪氏も常に仕事のことを考えている。三菱商事からハーバード、そして、ローソンの社長となった新浪氏は、ONLY ONEを目指しローソンを経営した。規模でセブンイレブンに勝てることを目指していなかった。社員に対して、厳しいオーダーも多い。ハラスメントの連発をご自身でいう。降格もすることも多かったという。役員から降格し、社員になっても、頑張ったらまたすぐにあげる。そうしたことを社員に見せていくことにより、みんなが頑張るようになる。そうして会社は変わっていったという。

サイバーエージェントの藤田氏は、調子のよい人が嫌い。社交的に見えるが内向的、パーティが嫌い、食事をするならカウンターで横に並んで二人で食事をするのが好き。内向的な性格はものごをよく考えているということを感じさせる。お金に対する考え方もお金をたくさんもつことに対する価値観は嫌い。事業のなかでの実現意欲が強い。

ネットイヤーグループの石黒氏は、ドライ。エンジニアの純粋さが好き、そしてそうした人々を好きになることで、理解が深まり、彼らと市場の動向をうまくつなげていきたいと考えるという。ビジネス系の人財より、純粋なエンジニアを好む。多角経営が嫌いだえるという。ポリシーなく多角化するのは嫌い。技術のシナジーがあるところである多角化でないと意味がないという。石黒氏は以外にもビジネス書は読まない。自己啓発書も読まないという。そのかわり小説を好むという。トルストイを好んでよむという。

練習が嫌いで、本番の勝負が好きという石黒氏、競走が好き、試合で勝負をするという経営者としてのスピリッツを感じる。プレッシャーを楽しむタイプなのだろう。また、ロールモデルという考え方が嫌いという。企業においての女性登用はもっと自然にやるべきだという。ダイバーシティは、もっと自然体であるべきだとう。こうあるべきだ、こうやったら部長になる、という考え方は嫌いという。昔のひとと同じことをしてもえらくはなれない。時代は変化する。昔と同じことをしても成功しない。試行錯誤をすることによって、成功していくことが必要なのだという。

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